2024.12 東京〜京都競馬場青春18きっぷ一人旅打ち 2日目③ 京都競馬場で勝鬨を高々に 朝日杯FS 中編
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2024年12月15日(日)
京都7Rと尿意に完敗した私は、心が打ちのめされ、静かな場所に行って現実逃避したいという気持ち一心で、騒がしいスタンド指定席から4コーナー寄りの一番端っこの閑散とした広場まで逃げ込む
トイレで膀胱をすっからかんにし、近くのベンチに座って、臭いため息を吐きながら途方に暮れる
「今日は朝から流れが悪い・・・。このままじゃ財布も膀胱同様にすっからかんになっちまうだ・・・。手を打たなければ・・・」
そこで思いついたのが、『美味しい物を食べて、己にパワーを付けて悪い流れを変える』という策である
ギャンブル好きの方なら一度は試みたことがあると思うが、科学的根拠ゼロ、且つ効果不明確の策である
ただ今の私は、そんな愚策でも縋りたくなるぐらい心が弱っている状態なのである
座っているベンチのすぐ側に飲食店(上写真)があり、眺めると『ぜんざい』と書かれたのぼりが掲げられていた
「京都っぽい食べ物で良いじゃないか・・・」

店の前まで行き、ぜんざいの値段を確認すると400円という良心的な金額
温かいぜんざいを食べて、冷え切った身体と荒んだ心を温め、あんこの糖分で脳を活性化させ、良い予想ができるようにする
今の私には打ってつけの食べ物だと確信し、列に並んで注文をする
「おぜんざいでございますぅ~」
(京都の方はぜんざいに『お』を付けるんだぁ・・・)
店員の方の言葉遣いに上品な京都らしさを感じ、温かいおぜんざいを受け取る

おぜんざいをお両手で抱えながら、お便所でおしょんべんをした後に座っていたおベンチに戻り、お割り箸でおぜんざいを頂く
「あったけえだぁ・・・」
お汁たっぷりで中に入っている長方形のお餅も柔らかくて美味しい
身も心も温まり、英気を養う
「おぜんざいだけではまだ足りない!勝つにはもっとおパワーを付けなければ・・・」


スタンド内に戻り、『森久』という店でたこ焼き6個入り(500円)を購入し、指定席(スマートシート)に戻って食べる
たこ焼きを膝元に置いた時に、容器に付着していたソースがズボンのチャック辺りに付いて、尿漏れ的な見た目のシミが股間に出来てしまい、一時てんやわんやするが、たこ焼きの味は美味しく満足する
「これだけ食べれば、悪い流れを払拭するだけのパワーが付いたはず・・・」
根拠のない策が成功することを信じながら、本日の大一番・朝日杯フューチュリティSに挑む


京都11R 朝日杯FS(GⅠ)
本命は1番人気アルテヴェローチェ
デビュー戦では同馬ではなくヒシアマン(2着)の方を将来有望馬として注目して見ていたのだが、直線でヒシアマンとマッチレースになった末、手応え余裕のまま押し切り勝ち。素質の高さを感じさせられた
2戦目(前走)のサウジアラビアRCは、前走騎乗の武豊さんから若手の佐々木大輔くんに乗り替わりとなったが、直線後方外一気差し切り勝ち
中団・後方勢に展開が向いた勝利ではあったが、マイルなら世代トップクラスの脚力&地力ありと確信し、今回人気ではあるが本命にすることにした
スタートも普通に出る方なので好位で競馬ができるのも魅力的、中枠の8番で良い位置も確保しやすく、揉まれずに回れるはず
ただ!前走は掛かり気味の追走で、気性面に不安あり・・・
そこは今回武豊さんに手が戻るのでレジェンドの経験値&腕で何とかしてくれると期待したい
馬体重大幅増(14キロ増)に関しては良いのか悪いのか何とも言えないが、馬の地力と騎手の腕を信じて、アルテヴェローチェ軸の3連複流し&馬連流し&単勝の計10,000円購入
馬券は売場に行くのが面倒くさいので自席でPAT購入

出来事はレース発走5~10分前に起こった
馬券を買い終えて、自席でレース開始を告げるファンファーレが響き渡るのをドキドキしながら待っていた時である
どこからか男性老人のデカい叫び声が聞こえてきたのだ
「お~~~~~い!!!2番が勝つぞおおおおおおお!!!!○×☆△だから!!えへへへへ!!!」
遠目からだったので細かく確認はできなかったが、シルエット的に60~70代のやせ型の黒っぽいジャンパーを着た男性が、前方の立ち見スペースを1コーナー側から4コーナー方向にゆっくり歩きながら、スタンド席側に向かって上記の言葉を何度も何度もリピートして叫び続けているのだ
泥酔しているせいなのか呂律が回っていない様子で、何を言っているのか全部は分からなかったのだが、「2番が勝つぞ!」というワードだけはハッキリと聞こえてきた
そしてご丁寧にもスタンド指定席の各ブロックごとに立ち止まっては「2番が勝つ」と叫び続けている
「何だ?あのヤバいじいさんは(笑)」とスタンド席に座っている観衆は苦笑していたが、私はこういった方(公営ギャンブル上級者)は大好物なので、良いものが見れたと嬉しい気持ちになって見つめていた
JRAの競馬場は他の公営競技の本場と比べて若者あるいは女性が段違いに多く、華やかさ&ポップさが激強いのだが、やっぱりギャンブル場にはこういった上級者の方がいてくれないと面白くないわな・・・
おじいさんの『2番が勝つぞファンファーレ』の後に関西GⅠファンファーレが場内に盛大に鳴り響く
勝負の一戦が始まる

「よし!!!!」
スタートを決めたアルテヴェローチェに歓喜の叫びが出る
「さすが武豊さん、お天才です」
このまま中団より前の位置で追走して、前に壁を作りながら脚を溜めて、直線一気に抜け出す
私のヴィクトリーロードが見えた!!!
馬群の隊列は内枠からダイシンラーが逃げて、アドマイヤズームが二番手で追走するゆったりとした流れ
「ん?」

「ちょっと・・・、下げすぎやしないか?」
好位を取りに行けるぐらいの好スタートを決めたが、折り合い重視なのか中団の窮屈そうな位置に控えてしまう(上写真の赤矢印)
そして勝負どころの3コーナーの下り坂を迎える頃にはさらに番手を悪くしている・・・
「たたたたけさん・・・、スローペースの流れでその位置から届くのでしょうか?末脚はメンバートップクラスだが、今日のトラックバイアスはそこまで後方差しが決まる印象は無いのですが・・・」
嫌な予感しかしないが、あの天才武豊が無策だとは思えない・・・
大丈夫だ!!問題無い!!!



「問題糞ありじゃねえか!!バカ野郎!!!」
やはりスローペースの流れでは後方から届く訳がなく、直線入っても後ろの方にいるアルテヴェローチェを見て
「オワタ・・・」
早々に外れを確信
「ゆたかああああ!!!」と大声で叫ぶこともなく、全校朝礼で校長先生の長い話を聞いている時ぐらいの死に面で直線の攻防を静かに見つめることになった・・・

アルテヴェローチェ 5着
後方の位置を考えれば、よく5着まで追い上げたとも言えるが、結果的に道中の位置の悪さが致命傷となった
直線に入ると包まれる位置にいて外側に出し切れず、芝が荒れた内寄りに切り替えて追うも進路も馬場も悪くて詰め切れず・・・
「何だよぉ・・・、良いスタート切れてたんだから前で競馬ができただろう・・・」
所詮素人意見だが、馬券を買っている身としては文句が言いたくなるような感想を抱く不完全燃焼なレースとなった
ちなみに・・・
この翌週に行われた名古屋大賞典(12月19日)でも武豊さん騎乗の1番人気ヤマニンウルス(単勝1.8倍で6着惨敗)を本命にしてどえらい目に遭う
武さんはその後、有馬記念(12月22日)で騎乗予定のドウデュースが脚部不安で出走取消、ご本人も発熱により、その週の騎乗を取り止めることに・・・
私以上に武豊さんもこの期間は流れが悪かったんだろうなぁ・・・

さてレースの方は、すんなり先行した5番人気アドマイヤズームが展開も楽で、直線抜け出し快勝
「やっぱり鞍上の川田さんは、勝てる確率が高いポジションに付けるのが上手だよなぁ・・・」
ちょっと待って・・・

アドマイヤズーム、2番・・・
気づいたのは私だけではなく、周りのスタンド席に座っている人々もざわつき始める
「さっきのじじいの言った通りになった・・・」
周囲を見渡して2番老人を探してみるも、姿はもうどこにも見当たらない
「何者だったんだ?まさか・・・」
あれは本物の神様だったのかもしれない・・・
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