北海道&東日本パス一人旅2019 5日目② 地酒で勝利の祝杯を 新潟競馬場旅打ち 後編

※書いているのは2025年ですが、2019年の話です。これまでの話はこちら





2019年8月25日(日)


競馬場に行く前夜の布団の中、あるいは競馬場に向かう道中では、馬券的中で大金を得た時の夢を抱き、素敵な未来を迎えることを毎度期待するのだが、これまでの競馬歴を振り返っても、思い描いた未来を迎えることは、ほぼ無い・・・

今回も新潟駅から新潟競馬場へ向かうバスの中で、薄汚い顔をニヤニヤさせながら、「数千円する新潟産の純米大吟醸酒を胃が破裂するまで呑む」「鈍行列車ではなく、新幹線で東京に帰る」などの夢を膨らませていたが


蓋を開けてみれば、収支-5,380円である(小倉11R終了時点)


思い描いた夢と乖離した現実を迎え、今回もいつものようにバッドエンディングで競馬を終えようとしている

「今回もダメだったか・・・」

新潟競馬場のスタンド席に座りながら、厳しい現実に打ちのめされていたが・・・

「バカ野郎!!」

どこからともなくダミ声が聞こえてくるではないか・・・

空を見上げると、雲の隙間から私の心の中のリトル低所得おじさんが全裸姿で現れて、みすぼらしい股間をブルンブルンさせながら大激怒している


「まだキーンランドCと新潟2歳Sが残ってんだろうが!5,000円負け?かすり傷じゃねえか!!諦めるんじゃねえ!この歯糞野郎が!!」


確かにリトル全裸低所得おじさんが言う通り、この後に行われる2レースで、どちらか一つでも当たれば、配当次第ではプラス収支に転じることは可能であり、純米大吟醸を呑む夢を叶えることも不可能ではない。あわよくば新幹線の夢も・・・


「やるしかねえだ・・・」


リトル全裸低所得おじさんに叱咤激励された私は、落ち込んでいた気持ちを今一度盛り上げ、素敵な未来を迎えるために立ち上がる


『地酒で勝利の祝杯を』





まず札幌11RキーランドC(GⅢ)は、スケベ心を出さずに1番人気ダノンスマッシュから買う

二走前の高松宮記念がスプリントGⅠ初挑戦となったが、外を回るロスがありながらの4着で、上位着と同様に評価できる好内容であった

その後は6月16日の函館スプリントSに出走予定だったが、禁止薬物検出のトラブルに巻き込まれる形で除外、ただその影響は今回無さそうで、能力を発揮できる状態にありそう

ダノンスマッシュ軸の3連複流し3,500円購入





そして新潟11R新潟2歳S(GⅢ)は、3番人気ペールエールを本命にする

前走は中京芝1400mの新馬戦を加速ラップで勝利
どちらかと言えばパワータイプで瞬発力勝負になると分が悪そうだが、今回1600mに距離が延びるのは歓迎

馬番は外めの13番だが、馬場が荒れた内側を避けて走れそうで良し

父はダイワメジャー、産駒はこのレース好相性で、17年1着・3着&15年3着の好成績

ペールエール、イギリス発祥のビールの名前だが、この馬に純米大吟醸の夢を乗せて、3連複流し計5,100円購入





あとは発走時刻を待つだけ。リトル全裸低所得おじさんの一喝のおかげで、全身全霊の予想を馬券化することができた

負けている時こそ、取り返そうとして高いオッズの馬券を狙いたくなるものだが、冷静さを保ち、スケベ心を出さず、現実路線の予想&馬券購入をした自分を褒めてあげたい・・・


「ハイ!お待ち!!」


目を瞑ると、新潟駅近くの居酒屋で、店員さんが威勢よく純米大吟醸を持ってきて、大トロの刺身を食べながら酒を呑んでいる自分の未来の姿が見える

素敵な未来は、もう目の前まで来ている


『地酒で勝利の祝杯を』





「中途半端な・・・」

新潟競馬場から新潟駅に向かう直行バスの中でぼやく


キーンランドC 3連複14.1倍×100円トリガミ的中

新潟2歳S 3連複43.1倍×200円的中

本日の収支 -3,950円


夢も掴めず、大敗もせず

東京から鈍行列車で遥々やって来ても、迎える結末は毎度お馴染みのバッドエンディングであった・・・


「そんなことはない!」


どこからともなく声が聞こえたので、バスの窓を見ると、雲の隙間から私の心の中のリトルおじさんがスーツ姿で現れる

よく見ると先程現れた全裸低所得おじさんとは別人である

「不幸中の幸い、大負けしなくて良かったではないか」

シワひとつないスーツを着こなした紳士が私に微笑みかける。そしてもう一言

「それと言わせてもらうが、全裸のおじさんの言う事を真に受けたらダメだよ。冷静に考えてみなさい?全裸のじじいなんて、100%ヤバい奴なんだから・・・」


そりゃそうだ・・・


スーツおじさんの正論に励まされ、新潟駅に到着する頃には心がスッキリして、表情も穏やかになっていた





この後は、電車で今晩宿泊するビジネスホテルがある燕三条に向かう

上越新幹線なら11分、鈍行列車なら約1時間

勿論、鈍行列車での移動となる。夢破れたのだから・・・

電車の時間まで少々あったので、新潟駅構内の売店を覗く

亀田製菓の新潟県でしか販売されていない『サラダホープ』が陳列されていたので即購入(198円)

「良い塩味だ・・・」

特別感があるせんべいではないが、永遠と食べていられる美味しさであった



新潟  17:21発 信越本線
東三条 18:08着

東三条 18:12発 弥彦線
燕三条 18:18着





宿泊するホテルは燕三条駅の側、チェックイン時間が20時なので、先に近くの飲食店で晩飯を済ませる

この辺りのご当地グルメと言えば、『燕背油ラーメン』である

大量の豚の背脂が上に乗っかっているのが特徴(背油チャッチャ系)で、煮干し系魚介出汁の醤油味スープに、伸びにくい極太麺が合わさるラーメンである(GoogleのAI検索より抜粋)

長旅の疲労、競馬での心労で、これ以上歩き回りたくなかったので、スマートフォンで近場の店を探す

徒歩圏内に『龍華亭』という店があったので、地図アプリを見ながらそちらへ向かう





祝日の夕飯時で混雑していることも覚悟したが、入店するとカウンター席が空いていたので安堵、スムーズに着席することができた

この店のスタンダードっぽいラーメン(750円)を注文して、時を待つ





「いいねぇ・・・」

こってりラーメンが好きな私にとっては、ゾクゾクするシルエットである

「おっ?」

麺をズルズルっと勢いよく口に含むと、見た目ほどこってりという感じではなかった。ただ太麺が背油たっぷりスープと絡まってナイスな味に仕上がっており、満足のいくラーメンでございました

スープに浮いた背油をレンゲですくっている時が、本日唯一の幸せなひと時であった





ラーメンで腹を満たした後は、近くにあったデカいイオンに入り、酒&スナック菓子&アイスを購入して、ホテルにチェックイン

購入した酒は、勿論純米大吟醸ではなく、トップバリュの1缶90円程度の激安レモンサワーである。夢破れたのだから・・・

1泊3,325円のユニットバス付きの部屋、ベッドと簡単にシャワーが浴びれる環境があれば十分

テレビを点けるとNHK‐BSが映り、千昌夫&吉幾三コンサートがやっていたので、御二方の名曲を聴き入る

そして『北国の春』を200満点中17点の千昌夫ものまねで歌いながら、安酒を体に流し込む


「♪あのふ~~るさとへ、帰ろかなぁ~~、あっぷぅ~~」


明後日には、故郷東京へ帰る

一人旅も終盤に差し掛かる



つづく



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